廃棄物の分類(日本国内)と問題点
廃棄物の定義と、資源としての捉え方
日本における廃棄物の定義
人が生活すると必ず廃棄物が発生する。
日本において、発生した廃棄物がマテリアルリサイクルやケミカルリサイクルができるかということと廃棄物がどういうものかという法律上の定義するかは全く関係ありません。ここがもう少し関連付けられないと本当の意味で廃棄物を資源として捉えることは難しいと感じます。
まず、廃棄物の定義について簡単に説明します。日本国内においては廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下、廃清法)にて廃棄物の種類が定義されています。細かい定義や法文は他に詳しく記載されているサイトがいくつも存在するので割愛しますが、個人的に大事だと思うことは以下の通りです。
- 一般廃棄物は発生した市町村に処理の義務が課せられる。一方で、産業廃棄物は排出者に処理の義務が課せられる。
- 一般廃棄物と産業廃棄物の分類は、産業廃棄物に明確な(と言ってもそれでもかなり一部はあいまいだけど)定義が決められており、その定義に合致する廃棄物は産業廃棄物。産業廃棄物以外の全ての廃棄物が一般廃棄物に分類される。
- 産業廃棄物は排出された業種、排出される形状や排出された経緯で分類される。
廃棄物を資源として捉えるという意味で廃掃法の一番大事な要点はこの3つだと思っています。
「廃棄物の科学的な組成」≠「法律上の廃棄物の分類」
何が言いたいかというと、科学的にどういう廃棄物だからこの分類。となっているわけではなく、法律上の廃棄物の概念は誰がどういう経緯で排出した廃棄物か。というのが分類のポイントとなっています。
つまり、科学的に全く同じものだったとしても…排出のされ方で分類が変わることがある。ということです。マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルができるかどうかは科学的な組成によるところが大きいです。ですが、分類はそうなっていない。これでは本当の意味で廃棄物を資源として捉えて扱っていくことが難しい。
廃棄物の分類における問題点
科学的な組成が全く同じでも、主に排出元や排出経緯により区分される現状
リサイクルができなくて処分するしかなかったとしてもこの事情は同じ。
例えば、家庭から排出される汚れのある紙くずは一般廃棄物ですが、製紙業から排出される紙くずは産業廃棄物です。業種指定されていない業界から排出される紙は一般廃棄物です。どれも同じ紙です。でも、法律上のゴミとしては別の物となります。
これは産業廃棄物の枠組みの中だけでも生じます。例えば、鉄板を加工する企業さん。表面加工するために研磨した際に発生する粉があるとして、これが地面に落ちて掃き掃除で集めた粉は汚泥。作業時に集塵機で捕集した粉はばいじん。どちらも同じ鉄板から出た粉で、科学的な組成は同じ。でも、産業廃棄物の分類は違う。こういう例はいくらでもあります。
科学的な組成に基づいて全ての廃棄物を明確に分類しようとすると細かくなりすぎて現実的にできなくなるのは間違いありません。
国としても一部の希少価値が高い廃棄物や代表的な廃棄物では既に組成が近いものでリサイクルを進めるための法整備はしています。例えば、小型家電リサイクル法や容器包装リサイクル法です。ですが、廃棄物を資源として捉え、リサイクルを促進するという考えの下ではまだまだ不十分だと感じます。
廃棄物の適切な処理ができるかは廃掃法上の分類では決まりません。その廃棄物を受け入れられるかどうかは個々の廃棄物の組成に基づいて判断されるからです。従って、品目としては同一でも受け入れられる廃棄物とそうでない廃棄物が処理場ごとに違います。ポリプロピレンやポリエチレンは出来ます!でも塩化ビニルはだめです。みたいな感じです。
この辺りが廃棄物を委託する側から見るとかなりわかりにくい。この分かりにくさが監督する行政にも、廃棄物の排出者にも悪影響を与えています。
「法律上の定義」と「科学的な組成」の両方を加味した分類により、廃棄物の削減・再資源化を推進できる
仮に法律の定義と科学的な組成の両方を加味した分類ができれば、間違いなく廃棄物量は減り、マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルの割合が増えます。監督する行政にとってかなりメリットが大きいです。
一方で、排出者は自分達が出しているごみが何かを知る。これが一番大事で廃棄物を資源として捉える第一歩ですが、これができるだけ廃棄物の処分に係るコストを容易に削減できます。
科学的な組成に基づいて適切な処理を推奨する枠組みの必要性を感じます。
監督行政、排出者それぞれへの提言はまた別の機会に綴りたいと思います。